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小説の世界で公開停止中の作品 フルメタル・パニック



戦場の果てで涙を流す少女達




 ドキューーン!!

 胸が熱い。

 千鳥と大佐殿を守るために敵との銃撃戦。

(俺は撃たれたのか?)

「そーすけ〜〜〜〜!!」

「相良さん!!」

 あわてて千鳥と大佐殿が駆け寄ってくる。

(いけない、ふせろ!!)

 しかし、声にはならなかった。

 だんだんと意識が遠くなる。

(これが死か。)

 そしてすべてが闇に包まれた。




 黒と茶色。

 まず目に飛び込んできた色。

 しかしそれしか認識できない。

 目をやられたのであろうか?

 突然、ぬるりとした感触が俺の体、全体を駆け抜けた。

 犬?

 ようやっと目が見えてきたようだ?

 だが待てよ?

 ひとなめされただけでなんで全体にぬめりとした感じを受けるんだ?

 宗介は不思議に思った。

 自分の体を見てみる。

!!

 きゃんきゃんきゃん。

 こ、子犬。しかも生まれたばかり。

(お、おかしい。俺は敵に撃たれて・・・・。まさか死んで生まれ変わったのか?)

 宗介は呆然とした。

 だが、子犬の本能か?

 母犬のおっぱいを吸う自分がそこにはいた。

 そして、それはすごく懐かしい、暖かい感じがしたのだ。

 宗介は、満足そうに眠りについた。

 それは、人としては、味わえなかった至福の時であった。




 ある程度大きくなり宗介は、すでにほとんど人間の記憶がなくなっていた。

 そして、兄弟達と楽しくじゃれあっていた。

 だが、そんな至福のひとときも終りがきた。

「この子犬がいいですね。」

 一人の美少女が俺を掴んだ。

 いとおうしそうに頭を撫でてくれる。

「く〜〜ん。く〜〜ん。」

「かわいいですね。」

 美少女は嬉しそうに言った。

 かくして俺は彼女に連れていかれた。

「今日からここがあなたのお家ですよ。そうだ名前をきめなきゃね。う〜〜ん。やっぱり宗介かな。宗介さん。よろしくね。私の名前はテレサ・テスタロッサ。テッサよ。」

 かくして俺はこの家に住むことになったのだ。

 彼女はやさしくしてくれた。

 母犬や兄弟と別れたのは辛かったが、テッサと一緒にいると何故か緊張しつつもすごく安心感があった。

 そんなある日の夜。

 テッサの寝室からすすり泣き声が聞こえてきた。

 てくてく歩いていくと、そこには枕に顔をつけ泣いているテッサがいた。

「相良さん。なんで、なんで死んでしまったんですか。好きだったのに。すごく好きだったのに・・・・・。」

 ずきっと胸が締め付けられたような感じがした。

「く〜〜ん。く〜〜ん。」

「宗介さん。ふふ、心配かけちゃったみたいですね。」

 テッサは俺を抱きしめ、泣いた。

 いつまでも、いつまでも。




「かなめさん。宗介さんのことお願いしますね。」

 テッサはそういって俺をかなめに引き渡した。

「仕事で留守にするんでその間よろしくお願いしますね。」

 そういってテッサは去っていった。

 かなめはよくテッサのマンションに来ていたからよく知っていた。

「く〜〜ん。く〜〜ん。」

「宗介?テッサがいなくなって寂しい?」

 寂しいに決まっている。

 でも、かなめといると安心もする。

 なんでなんだろうか?

 かなめのマンションに入り俺はソファー眠りについた。

 しばらくして、かなめは食事を作って持ってきてくれた。

 ドックフードにいろいろな手作りの素材が混ざっていた。

「ふふふ、宗介にご飯作ってあげていた時のこと、思いだしちゃった。おいしい。宗介?」

 テッサのところではドックフードしか食べていなかったが、これはこれでおいしい。

 突然、食事の上に水滴が落ちてきた。

 見上げると、かなめが目から涙をこぼしていた。

「宗介。あなたのもっともっと、いろいろなものを食べて欲しかった。ねえ、宗介。好きな人に作ってあげる料理ってすごく楽しくて嬉しくって。でも、もう、その気持ちも味わえないのね。」

「く〜〜ん。く〜〜ん。」

 俺はただただ鳴くことしかできなかった。




 そ〜〜すけ。そ〜〜すけ。

 さがらさん。

 さがらさん。

 遠くから俺を呼ぶ声が聞こえる。

 はっとして目を開ける。

 まぶしい。

「きゃん、きゃん、きゃん。」

 俺はびっくりして悲鳴をあげた。

「宗介。あんた、頭が変になった?」

 かなめはあきれた顔で俺を見ていた。

「ああ、相良さん。よかった。無事で。一時はどうなるかと思いました。」

 テッサは半分泣き顔の状態であった。

「自分はどうなったんでありますか?大佐殿。」

 ようやく意識がはっきりとしてきた俺は質問した。

「敵に狙撃されましたが、胸にあった生徒手帳とお財布のおかげで弾の威力が弱まり、心臓の手前で停止しました。危ないとこだったんですよ。相良さん。あなたをそんな戦場に送り出しておいて言うのもなんですけども、心配かけさせないでくださいね。」

 涙をこぼしながらテッサは言った。

 かなめはただ微笑んでいるだけだった。

 安堵という表情を浮かべて。

 俺はどうやら二人の美しい女性に好かれているらしい。

 まだまだ彼女たちを守る為に頑張らないとな。

 あらためてそう誓うのであった。



あとがき


 いかがでしたでしょうか?

「戦場の果てで涙を流す少女達」

 これの元ネタというのは二つです。

 ともに賀東商事の伝言板の書き込みです。

 宗介は犬!!っていう書き込み。

 そして給湯室で書き込まれていた最終回の話題です。

 まあ、即席で作ったもんですので、お楽しみいただけるかは、わかりませんが。

 この小説はオリザンさんのホームページの記念カウントを踏み、イラストを書いてくださるそうなので、せめてものお礼にと書いたものです。

 オリザンさんは、宗介とかなちゃんを応援しているので、こんな展開の話にしてみました。

 実際のところ、宗介がふたりを守る為に銃弾に倒れる可能性は、大だと思います。

 天然ボケで一般常識のない宗介ですが、せめて、せめて、夢でさまよう時くらい、あたたかな気持ちにさせてあげたいと思い、生まれたばかりの子犬って風にしたんですよね。

 で、子犬になってもテッサとかなめに好かれるあたり、宗介らしいっていうか(笑)

 なにはともあれ、3人には、幸せになってもらいたいものです。



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