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小説の世界で公開停止中の作品 フルメタル・パニック



クルツ君の闘病生活




 メリダ島。

 南洋の海に浮かぶこの無人島こそが、ミスリル西太平洋基地、強襲揚陸潜水艦「トゥアハー・デ・ダナン」の母港のある島である。

 そして、クルツや宗介達も普段は、ここを拠点として様々な軍事行動をおこすのである。

 そして、もちろん病院もあるわけで、かなめの救出作戦の際におった怪我を直すために、クルツはここで、入院することとなったのであった。

「はう〜〜〜。本当に辛いわ〜〜〜。」

 ベットで点滴を打たされているクルツは、本当に辛そうに顔をしかめていた。

 1部屋1台のベットの個室で、あまり広い部屋ではない。

 そんな部屋に宗介が見舞いに来ていた。

「しかし、本当に辛い戦いだった。よく生きて帰ってこれたものだ。」

 宗介は、真面目に答える。

「まあね。生きてるって本当に幸せだよな〜〜〜。」

 ふうっとため息をつきながらクルツは今までの事を思い出していた。

 無事に救出された後、宗介はかなめの入院した病院へと顔を出しにいった。

 今後ともかなめの護衛の任務につくためだ。

 いつまた狙われるともわからないので、保険というやつだ。

 一方、俺はうんうんとメリダ島のこの病院で唸っていた。

 さすがに今回の怪我は相当やばかったらしく、一歩間違えれば、傭兵として再起不能の怪我の状態だったそうだ。

 しかし、俺は奇跡の復活をとげた。

 で、やっぱ体を鍛えているから、直りだしたら早い訳で、1週間ほどで、なんとか松葉杖をついて歩くくらいには回復したのであった。

「お前も生きてまたかなめちゃんの護衛できて嬉しいだろ〜〜〜。」

 にやにや笑いながら宗介にたずねると、少しにやりとして宗介は答えた。

「うむ。何故かわからんが嬉しい。」

 この男にしては珍しい意思表示であった。

「ちゃんと大事な子を守ってやるんだぞ。俺みたいにならないように。」

「ああ、あの話だな。よくはわからないが全力をつくす!!」

 頼もしく答える宗介だが、そうなるにしたがって、宗介の貯金は減っていくことになる訳で、他人の金とはいえ心配になるクルツであった。




 怪我をすれば、当然なにも出来なくなるが、ある程度回復すると、とたんに暇を作ることになる。

 病院でやることといったら限られてくるが、俺は読書はあまりしないし、食事もまずいし、本当に暇で暇で死にそうになる。

 でだ、せっかく病院にいる訳だから、看護婦さんをナンパしまくるわけである。

「ねえねえ、一緒にベットにしけこまない。」

「いいお尻してるね〜〜〜。」

 などなど、いうのだがなかなかひっかかってくれないんだよな〜〜〜。

 なんかの雑誌に書いてある白衣の天使との情事って本当にあるのか〜〜〜と思う日々であったりした。

 でもまあ、ミスリルの女性陣ってみんな美人でかわいいんだよな〜〜〜。

 約1名を除いて。

「誰がその1名なのかな〜〜〜〜?」

「そう言い返すってことは、自覚があるってことですかね。姐さん。」

 花瓶の花をかえているマオに向かってクルツは言い返した。

「被害妄想が強すぎだね。姐さん。」

「くくくくく!!クルツあんたもなかなか言い返せるようになったわね。」

 すごく悔しそうにマオはうめいた。

「実際性格はともかく見てくれは美しいんすから。」

 その一言が失敗だった。

「どうゆう意味じゃ〜〜〜〜〜!!」

 花瓶が飛んできて、見事に的中する。

「死んでなさい!!」

 すごい形相でにらんでいるマオにクルツは恐怖を覚えていた。

 まあ、そんな感じで入院生活を楽しんでいたわけである。

 しかし、まさかあんな事態になろうとは、俺はその時、知らなかったのである。




「お姉さん。優しい〜〜〜。俺感激ですよ。」

 看護婦に向かって感謝とナンパしているクルツ。

「クルツさんは、いっつもそうやって女の子口説いているんですって?」

 美人の看護婦のお姉さんが注射器を腕から抜きながら、うふふと微笑みながら訪ねた。

「お姉さんだけですよ〜〜〜〜。っていったら、嘘になりますね〜〜〜。」

「正直でよろしい。でも、結構人気あるのよ。クルツさん。女の子に。どう?嬉しい?」

「ええ、そうなんですか?嬉しいに決まっていますよ〜〜〜。」

 ナンパしていることをスパ〜〜ンと忘れて、喜んでいるクルツ。

 本当に嬉しそうなその表情、それこそが彼の人気に秘密かもしれないなと美人の看護婦さんは思った。

「でも、その割には女の子からお誘いがないんですけどね〜〜〜?」

 ちょっと寂しそうにいうクルツ。

 そこもまたかわいいと思うのだ。

「クルツさん、若い子に結構人気あるから、ファンクラブあるのよ。で、協定がある訳。」

「あ、なるほどね〜〜〜。でも、俺、それで中学時代、寂しい思いしたんだよな〜〜〜。」

 残念そうにクルツは、肩を落とす。

「私の場合は、あなたが時折見せる悲しげな瞳がなんか引き付けられるのよね〜〜〜。クルツさんは、若いのになんでそんな表情をするのか?ごめんなさいね。聞いたらいけないことだったかしらね?」

 ずばり、言われてクルツは少し驚いた。

 たいした観察力である。

「さずが、年輩者の人は違いますね〜〜。見る所が・・・。」

「そうね〜〜〜。誉め言葉と受け取っておくわ。でも他の子達より少し人生経験があるだけよ。まだ20代なんだから。」

 ちょっとすねたような表情がかわいいとクルツは思った。

「失礼しました。」

 正直に謝るクルツ。

 手を振りながら看護婦さんはいいよいいよと答える。

「でもね、その事を一番始めに見抜いたのは、マオよ。バーでね。飲んでいる時に言っていたわ。で、熟女達はあなたの魅力に気が付いた訳よ。かわいい弟が過去のことで悩んでいる。だからこそ、本当の姉きみたいに接して少しでも過去のつらいことを薄れさせるようにしているって。いい、上官をもったわね。クルツさん。」

「ええ、最高の上官であり、姉さんですよ。」

 きりりとした真面目な顔でクルツは答えた。

「でも、内緒にしておいてくださいね。看護婦さん。(はあと)」

「わかってるって。」

 にこやかに微笑みながら美人の看護婦さんは答えた。




「じゃあ、クルツ。戻ることにする。早く負傷が直るといいな。」

 宗介は、ムスっとした表情で言う。

 まったくいつものムッツリ宗介である。

「おまえは、な〜〜〜んでそう、いっつもいっつもそう、ムスッとしてるかな〜〜〜〜。そんなことだから女の子の気持ちがわからないんだぞ〜〜〜!!」

 ベットの上に腰をかけながら、クルツは、見舞いに来ていた宗介にちゃちゃをいれる。

「あんたの場合はにへら〜〜〜としすぎなのよ。」

 ぽかっと頭を叩いてマオが笑っている。

 気の許せる仲間。

 これこそがクルツがもっとも大事に、大切に思うことだ。

 ミスリルに入隊たころは、ぎらぎらした獣のような俺だったが、彼らに出会い、心が救われた。

 なにげない会話。

 例え戦場で生きる者にとってもそれは大事なこと。

「それじゃ〜〜〜女の子にちょっかいだすんじゃないわよ!!」

 去っていく二人を見送りながらそう思うクルツ。

 しばらくして、廊下から足音が聞こえてきた。

 たたたたたたたた。

 で、ドアの前に来たら、いきなり、

 ずるべた〜〜〜〜〜ん!!

 と、派手にこける音。

「い、痛いです〜〜〜〜ぅ。」

 っと、かわいい声を出している。

 で、ちょっとして入ってきたのは、クルツ達の上官、テレサ・テスタロッサ大佐、通称テッサ。

 マオや宗介と引き合わせてくれた、ある意味の恩人の姿だった。

「ウェーバーさん。お久しぶりです。怪我大丈夫ですか?」

 何事もなかったのように、上官らしいからぬ口調で、それでも16才という年齢にしては丁寧な口調で訪ねるテッサだが、目には涙を浮かべたテッサを見て、思わず吹き出してしまう、クルツ。

 ちょっと顔を赤くして、照れた顔をするが、すぐ真顔に戻り、質問をする。

「ところで、相良さんはどこにいきました?日本に帰る前にウェーバーさんと相良さんの二人のいる状態で、あの戦闘の話を聞きたかったんです。」

「今、帰った所ですよ。でも出頭命令出せばいいでしょうに。」

 不思議そうに訪ねるクルツ。

「いえ、その、ちょっとお二人と話をしたかっただけですから。」

 ふうっとため息をつくテッサ。

 どうやら、息抜きをしたかったらしい。

 年齢の比較的近い俺は、よくテッサと話をしていた。

 で、どうやら、自分と同じ年令の宗介の事が気になっているみたいだ。

「そんなにかなめちゃんのこと、気になりますかね。同じウェスパードだからかな〜〜〜?ウェスパードの感がそう告げてます〜〜〜ぅ?」

「そ、そんなんじゃないですよ。うはははははは。って、ウェーバーさん!!なんでウィスパードのこと知っているんです!!最重要機密なのに!!」

 げ、しまった!ウェスパードの事知らないことになっていたのに、自分で暴露してしまった。

「そういえば、ウェーバーさんが何故、ミスリルに配属されたか、聞いていませんでした。上層部の強力な推薦で入隊したことしか知りません。」

 真顔でせまるテッサちゃんだが、それもまたかわいい。

 じゃ、なかったっけ!!

「お・し・え・て・く・れ・ま・す・よ・ね!」

 げ、切れかけている。

 こうなると、ウィスパードは、恐ろしい。

 仕方なくしぶしぶ過去の事を話すのであった。




「そうですか。そんな過去があったんですね。」

「そうゆう訳でテッサちゃんの護衛という意味もあるんですよ。」

 そう、俺はウェスパードの事を知っている。

 戦場にいける兵士でそうゆう事を知っている者が必要でもあったのだ。

「でも、ウェーバーさんがそんな過去を持っていたなんて、知りませんでした。」

「まあ、隠していたからね〜〜〜。このこと知っているのは、俺を推薦してくれた上層部の一部と、つい最近、かなめちゃんの事を気になっている宗介。そしてテッサちゃんだけだよ。まあ、マオ姐さんもうすうす感じているみたいだけどね〜〜〜。てな訳で、そうゆう感じの仕事は俺に回してちょうだいね。」

「はい。わかりました。ところでウェーバーさん?」

 自分の髪の毛をいじりながらテッサは訪ねた。

「相良さんてかなめさんの事をどう思っているんでしょうね?」

 なるほでね。

 にくからず思っている訳か。

 まいったな。

 かなめちゃんと宗介、応援しようと思っていたのに。

「さあ?どうかな〜〜〜〜。まあ、気にはなるんでしょうよ。」

 テッサの気持ちに気がつかないように、シレっと答える俺。

 少し安堵した表情のテッサちゃん。

 これから面白くなりそうだね〜〜〜。

 そんなことを思いながら俺はにやりと笑っていた。

 信頼出来る仲間と上官。

 辛い過去はあるけど、俺は幸せ者なんだな〜〜〜と思うのであった。




 夜の病院とは、薄気味悪いものである。

 たとえどんなに新しい病院でもだ。

 ましてや、ここは軍の病院なのだ。

 たくさんの兵士や、少数ではあるが戦場で犠牲にあい、ミスリルに救助された人などが、あの世に旅立っているのである。

 真夜中の病室でうつらうつらとしながらも、クルツはそんな事を考えていた。

 クルツにとって病院とは、あまりいい思い出がない。

 だからなおさら、夜の病院は好きにはなれないのだ。

 ・・・・・・・・・・

 何か聞こえたような気がした。

「気のせいかな?」

 なにも気配は感じられない。

「まあ、いいや。」

 そうして、クルツ眠りについたのである。

 次の日の夜、いつものように眠りにつこうとした、クルツの耳になにかが聞こえた。

 ふふふふふ。

 女の子がくすくす笑う声。

 はてなと思い廊下に出てみたクルツだが、そこには誰もいなかった。

「気のせいかな〜〜〜?」

 ぽりぽりと頭を掻きながらクルツは、ベットに戻り眠りについた。

 ところがである、それが毎晩毎晩続くのである。

 一度他の患者にも聞いてみたが、そんな笑い声は聞こえないといっていた。

「精神に異状きたしたかな〜〜〜〜。」

 その時はまだ笑い話ですんでいたのである。




 数日後、訓練の為、メリダ島に帰還した宗介は、クルツの見舞いにやってきた。

 そこで目にしたものは、頬がこげ、目はうつろなクルツの姿であった。

「ど、どうしたんだ?クルツ。」

 脂汗を流しながら宗介はぐて〜〜〜っとしているクルツに質問した。

「ああ、宗介か〜〜〜。よく来たな〜〜〜。」

 いつものクルツではない。

「いったいなにがあったんだ?」

「宗介〜〜〜〜。お前、幽霊とか超状現象とか信じる方か?」

「うむ。この世の中には科学ででは解明されていないことが多々ある。ウィスパードにしたってそうだ。実際に幽霊とやらには何回か目にしたこともある。」

 うんうん頷きながらクルツは少しほっとした表情をした。

「実はな〜〜〜。」

 っと、クルツは、いきさつを話だした。

「数日前から、女の子の笑い声が聞こえるんだよ。ふふふふふってな。初めは気のせいかと思っていたんだが、こういつもだと変だろう?他の人に聞いても知らないっていうしな〜〜。」

「ふむ。それはおかしいな?自分で確認とかしたのか?」

「ああ、すぐに廊下に出たりしてな。でも駄目だった。いよいよ俺にもヤキが回ったかと思い、精神鑑定とかしたんだが、異状無しだった。」

「よかったな。これからも傭兵として生活できるじゃないか。」

 なんか違うな〜〜〜と、感じながらもクルツは、話を続けた。

「でだ、その現象がずっと続いてな〜〜〜〜。これは精神的にまいるよ。」

「ふむ。確かにな。」

「そして、ついに昨日の夜、廊下を白い影が横切ったんだよ〜〜〜。もりろんすぐに飛び出してみたさ。でも誰もいないんだよ〜〜〜〜ぉ!」

 ほとんど発狂寸前のクルツ。

「落ち着け。落ち着け。クルツ!!」

 必死になってなだめる宗介。

 ぜえぜえ息をしながら、なんとか落ち着くクルツだが、相当参っていることには変わりがなかった。

「ふう、少しは落ち着いたよ。すまんな。グチに付き合わせて。」

「何、いいさ。ところでクルツ。」

「なんだい?」

「思うに、場所を代えてもらってはどうだ?」

「へ?」

 ぽかんとするクルツ。

 宗介は続けた。

「他の誰にもわからないということは、この病室だけの現象かもしれない。2、3日、ここから離れた病室に移って様子をみたらどうだ?」

 ポンっと手をたたくクルツ。

「それがあったか〜〜〜〜。宗介!!愛してるぜ〜〜〜〜!!」

 がばっと抱きつきクルツは、感謝を体で現した。

 がちゃ!!

 突然ドアが開く。

 そこには、美人の看護婦さんとマオがいた。

「クルツ。お前なにやってんの!!」

 ぼか!!

 おもいっきり後頭部を殴られ気絶したクルツがそこにいた。




 話を聞いたマオと看護婦さんは、院長に掛け合い別の病棟にある病室に一時的に移ることになった。

 それはそれで感謝はしているのであるが・・・・・・。

 そこは精神異状者を隔離する病棟だった。

「な、なんで?」

 クルツは、思わず声にだして呟いた。

「ここが一番一般病室から離れているんですよ。」

 看護婦さんがしれっという。

「ようするに、精神異状をきたしたら、わざわざ移動しなくていいっていう考えでしょ。効率的でいいわね〜〜。」

「すっごく嫌な言い方なんですけど。姐さん。」

「クルツ。落ち込むな。かえって静かで養生にはいいじゃないか。」

 わかっていない宗介の慰め?

「どうせ、俺はお化けの恐い、精神異状者ですよ〜〜〜〜。」

 うるるうるる〜〜〜〜ぅと、涙を流す、クルツであった。




 眠りに落ちるクルツ。

 いつもなら聞こえてくる笑い声も聞こえない。

 久々にゆっくり眠れそうな夜である。

 もっとも窓に鉄格子がなければの話であるが。

 だが、自由に出入りできるよう、合鍵を預かっていたので、そんなに圧迫感もない。

 すやすやと寝息をたて、夢の世界へと旅立つ。

 どれ位たったであろうか?

「ふふふふふ。」

 また、女の笑い声。

 しかもはっきりと聞こえる。

 目を開けると、そこには16、7の女性が立っていた。

 白いパジャマを着ている。

 顔は青白く折角の美人な顔が怖く見えてしまう。

「くくくくく。」

 そう、この声だ。

 しかし、それはどうでもいいことであった。

 クルツは驚いた目でその女性を見ていた。

「ま、まさか、いや、しかし・・・・・・・。」

「ふふふふふ。」

 何かに取り付かれたような虚ろな目。

 しかし、クルツはただただ、狼狽するのであった。

「み、未来(みら)・・・・・。」

 そこには、死んだはずのクルツの幼馴染みで、恋人だった如月未来(きさらぎみら)が笑いながら立っていた。




 信じられない光景。

 目の前に死んだはずの如月未来[きさらぎみら]がいるのだ。

 守れなかった最愛の人。

 一生忘れられない愛しき人。

 その彼女が目の前にいるのだ。

 そう、目の前に・・・・・。

 ついに俺は狂ってしまったのか?

 それでもいいと思った。

「未来、未来!!」

 まだ痛む体をベットからお越し、俺は未来に近寄っていく。

「ふふふふふ。」

 未来は虚ろな目で俺を見ている。

 近づくことで、未来は幽霊なんかじゃなく、生きていることがわかった。

 生身の体か放つエナジーというか、波動というか。

 それがはっきりと感じられる。

「未来、俺だ。クルツだ!!わかんないか!!」

 しかし、未来は「ふふふふふ」と笑い続けるのみ。

 俺は未来を抱き締めた。

 あたたかい温もり。

 懐かしいにおい。

 俺は彼女が未来であることを確信した。

 しかし、あの時と、そう、薬により死んだあの時と同じ姿、いや少しだけ成長した姿でいるのだ。

「未来、俺だよ。クルツだよ。生きていたんだな。なんで生きていたかはわからないけど、そんなことは、どうでもいい。生きて、生きていたんだな・・・・・。」

 目から涙が溢れ出す。

 未来が死んだあの日、病室で流した涙。

 その時から封印していた涙が溢れてくる。

「ねえ。あなた誰?」

 未来が訪ねてくる。

 どうやら記憶を失っているようだ。

「そうか、わかんないのか・・・・・。」

 軽い失望感がおそう。

 その時、病室の扉が開いた。

「魅羅ちゃん。またうろついていたのね?」

「美人の看護婦さん・・・。」

「クルツ君。駄目じゃない。病人を襲ったりしたら。」

 くすっとしながら、冗談っぽく俺に言う看護婦さん。

「未来がここにいるとは思わなかったな。」

「あれ、クルツ君。魅羅ちゃんのこと、知っていたの?彼女も大変だったわね〜〜。」

 悲しそうな目をする看護婦さん。

「実験道具にするため、薬をうたれたって。それで精神に異常が出ているそうよ。かわいそうに。」

「でも、生きている。それが、それが救いです。」

 噛みしめるように、俺はつぶやいた。

「そうね。もし、あそこで相良軍曹が助けにいかなければ、彼女はまた、実験室に連れ戻されたでしょうね。」

 うなづきかけて、はっとした。

「宗介に助けられて〜〜〜〜!?」

 思わず絶叫する俺。

 それってもしかして・・・・・。

「そうよ?クルツ君。ソ連で彼女を救出してここに収容されたのよ。情報員が一人死んでしまって。いくら軍事組織とはいえ、人が死ぬのはつらいわよね。」

 ため息をつく看護婦さん。

「か、彼女のフルネームはなんて言うんですか?」

 おそるおそる訪ねる俺。

「神無月 魅羅(かんなづき みら)ちゃん。あ、クルツ君。精神異常が直ったら、ナンパしようと思っているでしょう?」

「あははははは、バレましたか〜〜。」

 てれ笑いをする俺。

 しかし心の中は、嵐が吹き荒れていた。

 ソ連で救出した、ウェスパードの少女。

 遠くでちらっとしか見ていなかったのが、今更ながらに悔やまれる。

(いったいどうなっているんだ?)

 名前が違う。

 でも、俺は彼女が未来であることを確信していた。

「魅羅ちゃん。さあ、お部屋にもどりましょうね。」

「ふふふふふ、ええ、もどりましょう。」

 素直に従う魅羅ちゃん。

「あの、看護婦さん。」

「な〜〜に?クルツ君?」

「ここで会ったのも何かの縁。もし先生の許可があれば、彼女のリハビリ手伝いますよ。他人とのコミニケーションも必要でしょう。症状が軽くなったら。」

「そうね〜〜。先生に聞いておくわ。それにしても、よっぽど魅羅ちゃんのこと、気にいたのね〜〜。」

「そ、そんなことないですよ〜〜。」

「あ、顔が赤い。」

 ちゃかす看護婦さん。

 慌てる俺。

「ふふふふふ、面白い。」

 魅羅ちゃんがしゃべった。

「まあ、魅羅ちゃん。面白いの?」

「うん。面白い。」

 にっこりと笑う魅羅ちゃん。

「これは確かにクルツ君に協力してもらった方がいいみたいね。魅羅ちゃんもクルツ君のこと気にいったみたいだし。」

「ええ、お願いしますね。」

 そういって看護婦さんと魅羅ちゃんは病室を出ていった。

 新たなる謎。

 彼女は未来なのか?

 俺の本能は魅羅ちゃんは、未来だと告げている。

「こりゃ〜〜〜、調べないとな〜〜〜。」

 がぜんやる気の出てくる俺であった。




 メリダ島基地。

 病院から少し離れた場所に位置するオンボロ基地だ。

 基地自体はオンボロでも人材と技術は世界最高ではあるのだが。

 松葉杖をつきながら、クルツは書類を持って部隊の上司にあたるテッサの個室に来ていた。

 前にテッサが病院に訪れた際に、なるべく早くウィスパードの能力を理解している目から見た、かなめの行動や戦闘状況を報告して欲しいと要請を受けていたからだ。

 命令ではなく、個人的なお願いといった方がいい。

 実際のところ、クルツが最重要機密を知っているのは、公式にはミスリルの一部上層部しかいない訳で、テッサはたまたま知ったにすぎない。

 そんな訳で命令ではなく、個人的なお願いとなる訳である。

「すいませんね。ウェーバーさん。わざわざ届けてくれて。本来ならば私がいかなければならないんですが。」

 テッサの個室、上級士官の個室だが、そこでクルツは封筒に入った報告書を手渡した。

「な〜〜に。いいんだよ。テッサちゃん。それに忙しいのはわかっているから。

 手をひらひらさせてクルツは、椅子に腰をかけた。

「よっこらせと。」

 じじくさい言葉を発してふ〜〜っとため息をつく。

「まだ出歩くには少し早かったんじゃないんですか?」

 心配そうにクルツに話しかけるテッサだが、クルツは手を振りながら、

「な〜〜に。たまに体動かさないとなまるからね〜〜。」

 と、強がりをいってみせた。

 マオが見たら、単に見栄を張っているだけといわれそうだが。

 ポットから市販されている強化プラスチックの紅茶のポットにこれまた市販のティーパックを入れて紅茶を作りながら、テッサくすくす笑っていた。

「本当にウェーバーさんって強がりいうんですね〜〜。メリッサさんの言う通りですね。」

「あんまり信じないように。あの姐さんの言うことは。」

 釘をさしておくクルツだが、得てして女の子同士の会話はそうゆう話で盛り上がるものである。

「はい、あまりおいしくありませんけど、どうぞ。」

 マグカップに紅茶をそそぎ、クルツに手渡した。

 ずず〜〜〜とすすると、ほのかにミントの匂いが漂い、なんともいえない壮快感を感じさせる。

「へ〜〜〜。おいしいね〜〜。」

 ちょっと意外に思うクルツ。

「ちょっと悪いけど、テッサって仕事に忙しくてこうゆうこと苦手だと思っていたよ。」

「いえ、ただちょっとミントの葉を一緒に入れただけですよ。」

 砂糖も何も入っていないけどそれが逆においしいと感じる。

 ちょっとした工夫である。

「お食事とか、後片付けとか苦手なんですけど、将来おいしいお茶や、コーヒーを入れれるようになりたいな〜〜〜っていうのが私の夢なんです。」

「へ〜〜〜。やっぱ宗介?」

 ちょっとからかって見る。

「はい?なんのことです?」

(あれ、ちがうのかな?まあいいか。)

 てっきりテッサは、宗介に好意を抱いていると思っていたのであるが。

「ところで、この、千鳥さんがウィスパードとしての知識を無意識のうちに言葉に出していたってところですが・・・・。」

 封筒の中の書類に目を通してテッサが質問してきた。

 こうして約30分、質問が続くことになったのである。




「なるほど。そうゆう状況だったんですか。ありがとうございました。」

「な〜〜に。いいってことよ。」

「ところで、ウェーバーさん。私に何か頼みたいことあるんでしょう?」

 さすがは艦長を勤めているだけある。

 クルツは、そう思った。

「いや〜〜。テッサちゃんはごまかせませんね〜〜〜。実は、今回の事件の発端となったソビエトで保護した、ウェスパードの少女、[神無月魅羅](かんなづきみら)の事についてです。」

 だら〜〜〜としていたクルツは、ぴしっと背筋を伸ばし真面目に語りだした。

 普段のクルツを知る者がみたら、さぞ驚くことであろう。

「私が病院で、精神的なことで参っていたことは、ご存じでしょう?」

「ええ、報告は受けています。自分で進んで精神鑑定もしたそうですね。」

「はい。宗介ほどの慎重さは、ありませんがやはり戦場では、こうゆうことが命とりになりかねませんから。それで病室を一時移ったこともご存じだと思うんですが、そこで彼女と出会いました。」

 ふふふふふと微笑む魅羅に。

「神無月さんは相当の薬物を打たれて日常生活に戻るのに相当な時間を要すると聞いています。」

 うつむきながらテッサは怒りのオーラを発していた。

「その彼女なんですが、前に話した[如月 未来](きさらぎみら)にうりふたつでした。」

「へ?」

 テッサは、心底驚いたという顔をした。

「それで、もしも機密に触れなければの話ですが、なにかご存じのことがあれば教えてもらいたいと思いまして。」

「その話は本当ですか?ウェーバーさん?」

「はい。そして神無月魅羅が如月未来と同一人物であると確信しています。」

 きっぱりとクルツは言い切った。

「なんでそう思うんです?ウェーバーさん?」

「幻聴が聞こえて精神鑑定を受けた訳ですが、今思えばこれは神無月魅羅から発せられた微弱なテレパシーではないかと推察します。如月未来は微弱なテレパシーの能力を持っていました。当時、彼女の能力を受けていた自分との波長が今回と同じような気がします。まあ、非論理的ですけど。」

 テッサは真面目なクルツを見て意地でも神無月魅羅が何者か、調べようとしていることがわかった。

「残念ながら、彼女の経歴は、私もわかりますが、その他については全然わかりません。ちょっと待ってくださいね。」

 テッサは、パソコンのスイッチを入れパスワードを打ち込んだ。

 しばらくして神無月魅羅のプロフィールが現れた。

「神無月魅羅さん。16才。某県某高校高校2年生。家族構成はこれですね。テニス部に所属。今から1ヶ月前に行方不明。2週間前にたまたま救出。薬物中毒により社会復帰にはかなりの時間がかかるもよう。ウィスパードの確率は99%。これしか私にもわかりませんね。」

 活発そうな少女の写真。

 今の彼女にはない明るい笑顔。

「さてと。すいませんが私、そろそろ司令部で仕事がありますので。あ、しばらく見ていていですよ。一応大佐コードでパスワード打ってありますからもしかしたら何か情報あるかもしれませんから。」

 そういってテッサは部屋を出ていった。

 クルツは、ドアに向かって頭を下げた。

 いわばミスリルの機密を一介の軍曹にオープンにしていったのであるから。

 一歩間違えればテッサまで処罰がくだされかねないのだから。

 クルツはキーボードを激しく叩き、気になる部分をフロッピーに記録していった。

 しばらくして突然画面に文章があらわれる。

[Tより6、記録保存要請]

 次々に送られてくるデーターをクルツは、慌ててフロッピーに保存する。

 おそらくテッサが司令部でハッカーして情報を送ってくれているのであろう。

 ただただ、感謝するクルツであった。

「これで、何かわかるかも知れない。」

 次々画面を流れていく情報を見ながらクルツは期待に胸を踊らせていた。




 テッサちゃんから送られてきた機密データー。

 そして、俺が調べたデーター。

 そこに記録されていたものは、驚くべき事実であった。

 まず、神無月(かんなづき)家は、如月(きさらぎ)家と遠い親戚にあたっていた。

 と、いうのは、日本の暦にあたる名称を持つ12家が、日本の神秘的現象を司る家系であったのだ。

 神官、超能力者などの能力を持つ家系なのだ。

 もっとも、すでに本家は皆途絶えており、継承するべき人材はもはや存在していなかった。

 神無月家と如月家は、そんな家系の遠い分家であった訳である。

 つまり、もし、神無月魅羅(みら)が如月未来(みら)と、同一人物でなかったとしても、そんな家系の出であった為、互いにテレパシー能力があったということになる。

 まず、これがひとつの接点であった。

 しかし、それはそれほど驚くべきことではなかった。

 次に、日本のウィスパードと思われる人物の約6割近くが12家の血を引き継ぐ者達で占められていることである。

 つまり、何らかの形で超能力の能力を持つ者がウェスパードの可能性が高いということである。

 まあ、これはそれほど俺にとっては重要な情報ではなかった。

 むしろ衝撃を受けたのはこの後であった。

『日本国家国土安全管理局機密文書

 如月未来について

 如月未来は99%ウィスパードであることが判明した。

 これは、彼女をさらった組織の病院のファイル等を調べた結果である。

 省略

 父親の同意を得て、解剖を実施しようとしたところ、突然心臓が鼓動を始めた。

 死亡が確認されて約48時間後の事である。

 その後の調べで、ウィスパードを調べる為に使われた薬の摂取量が致死量にぎりぎり達しておらず、仮死状態に陥り体内で自然分解し、蘇生したものであると推定される。

 意識回復後の彼女の記憶は失われていた。

 これは、長時間に渡って仮死状態だった為、脳の記憶の部分に深刻なダメージを与えていた事、それから恐怖への心理的ブロックがかかった為と思われる。

 当局はこのまま父親の元に返す事は、再度組織に狙われる可能性が大きいと判断。

 このまま如月未来を死亡したことにすることを決定し、父親に報告、同意を得た。

 当局は如月未来に対してカウンセリングを実施、その際に神無月氏の協力を得て彼の義理の娘としての記憶を埋め込む事に成功した。

 神無月氏の死んだ妻の前の夫との間に出来た娘で、前夫が死亡した為、神無月氏が、引き取った事にする為である。

 神無月家は、ウェスパードの可能性を持つ12家の1つであり、組織に狙われる可能性があるのだが、彼女の記憶が戻らないようにする為にどうしても身近に置いておきたいこと。

 今回の事件により、12家の血を引くものにガードをつけることが決定した為、逆に安全性がわずかにであるが、高まったことが今回の決定になった。』

 つまり、如月未来と神無月魅羅は、同一人物であるということである。

 俺は涙を流していた。

「生きていたんだな。」

 さらに情報に目を通してみる。

『神無月魅羅のカウンセリングが終わったのは3年後のことである。

 彼女は某高校に高校2年生として入学した。

 なお、今後とも監視は続けられる。』

 しかし、神無月魅羅は、またもや狙われた。

 俺が叩き潰した組織以外の者に。

『日本国家国土安全管理局発・ミスリル本部宛

 ウィスパードとして監視中の神無月魅羅(如月未来)が、何者かによって連れ去られた。

 現在調査中!!

 情報等ある場合の提供を求む!!』

『ミスリル発・日本国家国土安全管理局宛

 神無月魅羅はソ連に連行された模様。

 現在内偵調査中!!』

『日本国家国土安全管理局発・ミスリル本部宛

 3年前、神無月魅羅の解剖に立ち会った医師の一人が、遺体として発見!!

 なお、その家族も行方不明!!

 推論として、家族を人質に取られ、機密情報を漏らしたものと思われる。』

『日本国家国土安全管理局発・ミスリル本部宛

 ソ連外交筋より情報提供!!

 一部の将校が誘拐事件にかかわっている可能性を伝えてきた。

 ソ連は現在内偵調査中とのこと。

 なお、非公式に救助作戦の打診を受けた。』

『ミスリル発・日本国家国土安全管理局宛

 当方で内偵中のウェスパード関連施設より、日本人の女性を救出!!

 現在保護中!!

 神無月魅羅であると断定!!

 当方で保護する用意あり!!』

『日本国家国土安全管理局発・ミスリル本部宛

 当方にて再度保護した場合、再度襲撃される恐れがあると考える。

 まことに遺憾ながら、今回の件は我が国の力不足を浮き彫りにしたものである。

 まことに申し訳ありませんが、そちらで保護してくださると助かります。

 追伸

 ありがとう。』

 壮絶な内容であった。

 この事件があったからこそ、ミスリルは、かなめちゃんを守る為に動いたのであろう。

「今度は俺が守ってやるよ。そう、今度こそな・・・・・」

 今、新たなる目標が生まれた。

 如月未来、いや、神無月魅羅を守る戦い。

 たとえ、俺の事を覚えてなくてもいい。

 そう、これは俺の義務だからな。




 俺はいつのまにか気絶していた。

 と、いうのも、あまりの衝撃の事実に大きなリアクションをしすぎてイスごとひっくり返ってしまったのだ。

 げ、打ち身捻挫が増えている。

 シクシク。

 なんってこった。

 いかんな〜〜〜〜っと思う俺であった。

 だがしかし、これですべての謎が解けたのでよしとすべきであろう。

 俺は痛い体をひきずりながら、テッサの部屋を辞したのである。

「テッサちゃんに借り1だな。なんかお返ししないとね〜〜〜〜。」

 今ごろくちゅんってくしゃみしているであろうテッサに感謝の気持ちを送っているクルツであった。




「しっかし、外出から帰って来たと思ったら怪我して帰ってくるなんて、困ったものね。」

 女医のクレアさんが包帯を巻きながらあきれ顔でぶつぶつとつぶやいた。

 彼女は精神病棟の管理者でもある。

 そう、俺を精神病棟に一時移動させた張本人であった。

「でも、クレア?ここだけど、なんでぶたれた跡もあるかな?」

 美人の看護婦さんのシーラさんが不思議そうにはれあがったところをつんつんついてくる。

 俺は二人に神無月魅羅(かんなづきみら)が如月未来(きさらぎみらい)の事を話した。

「ほえ〜〜〜。クルツさん。すごい経歴をお持ちなんですね。」

 シーラさんは心底びっくりした顔をしていた。

「う〜〜む。そうなると、ますますリハビリが難しくなるわね。果たしてどちらの人格が戻るか、神のみぞ知るって状態ね。クルツ君は如月未来ちゃんの記憶が戻ってほしんだと思うけどね。」

 クレアさんはにっこりと微笑みながらそういうと、今後の治療方法を検討し始めるといった。

「正直なところ、クルツ君の情報は治療する上で非常に重要なことだわ。感謝します。ところで何か欲しい。なんなら私とシーラと、マオで一夜を共に過ごしてあげてもいいけど?」

「やめときます。なにされるかわかったもんじゃない!!」

 実際、メリダ島の大人の美女ベスト3に入っているクレア女医、シーラ看護婦、マオ姐さん(なんで入っているのかな〜といたら殺されるな)は、大の仲良しで、3人にかかれば、屈強な男達は全面降伏させられることになる。

 何人の兵士が彼女ら魔女にいたぶられたことであろうか。

 思い出したくもない。

「遠慮しなくてもいいのに。」

 がっかりした顔のシーラさん。

 本当に普段はおしとやかな白衣の天使のシーラさんがひとたび牙をむいたら魔性の女に変身するんだからな〜〜〜。

「女って怖いね〜〜。」

 俺はポツリとつぶやいていた。




 深夜の病室。

 俺はじっとベットに横たわっていた。

 また来るであろう人を待って。

「ふふふふふ。」

 来た。

 がちゃり。

 ドアが開く。

 そう、神無月魅羅だ。

 もっとも俺は未来という字をあてて読んでいるが。

「やあ、未来ちゃん。また来たのかい?」

「うん。私ね。探している人がいるの。」

「ふ〜〜ん。誰それ?」

「王子様。私を助けてくれた人。白馬に乗って助けてくれたの。」

 宗介のことだ。

 何故か俺はめまいがした。

「好きなの。彼のことが。ねえどこにいるの?」

 好きな女の子が過酷な運命をたどり、今、ここで巡り合う。

 しかし、過去の記憶を失い、今、宗介の事を思っているのだ。

 俺は宗介に嫉妬している。

 でも、未来がそういうなら協力してあげよう。

 彼女の笑顔を見たいから。

 俺は彼女を抱き寄せる。

 未来はびっくりした顔をしていた。

「ああ、会わせてあげるよ。でもちゃんと病気を直してからね。」

「うん!!あれ、なんで泣いているの?」

 俺は目から涙を流していた。

 好きな女の子の為にあえて別の男と仲良くするようにする。

 そして、彼女の過酷な運命をうれいて。

「なんでもないよ。未来。ちゃんと合わせてあげるからね・・・・。」

 夜の病室の窓からあの時と同じ月光が差し込んでいた。

「今度こそ、絶対守ってあげるからね。」

 俺は、そう呟いていた。



あとがき


ウィーズ「いや〜〜。いかがでしたか?クルツ君の闘病生活は。」

テッサ「わ〜〜い。私が活躍しているです〜〜ぅ。」

ウィーズ「うんうん。よかったね。テッサちゃん。」

テッサ「はいですぅ。」

ウィーズ「さて、今回のお話は、謎の人が実は如月未来であったという衝撃的なお話であったわけですが、なんでクルツ君が入院した話にしたかという訳がこれの為だったんですよ。」

テッサ「てっきりクルツさんの精神異常者のお話を期待していた人は、ごめんなさいですぅ。代わりに誰かお書きになってメールで投稿してくれたら嬉しいです〜ぅ。」

ウィーズ「さらに新キャラが2人出てます。」

テッサ「美人の看護婦さん。シーラさん。彼女は白衣の天使さんでとても人気があるんですぅ。おしとやかな物腰で彼女のファン多数ですぅ。」

ウィーズ「もう一人はクレアさん。この方はゆーいちさんのオリジナルキャラで使わせてもらいました。」

テッサ「そしてメリッサさんとは大の仲良しさんなんですぅ。」

ウィーズ「テッサちゃんは彼女達の悪い方にはいかないように!!」

テッサ「え〜〜。あこがれているのに〜〜。」

ウィーズ「はいはい。じゃあ、次回の予告ですね。」

テッサ「はい。次回は私とウェーバーさんが主役になる予定です。」

ウィーズ「時空列は少しさかのぼる。クルツがテッサの部屋でデーターを収拾していた時のこと。ある程度目処がつきふと横をみると本が一冊。いや、日記が一冊。」

テッサ「私のつけている航海日記です〜〜〜ぅ。なんの飾りもない普通のノートです。」

ウィーズ「こっそりそれを読むクルツ君。後はお楽しみということで。」

テッサ「タイトルは、[第3部 テッサちゃんの航海日記]ですぅ。」

ウィーズ&テッサ「それでは皆さん。またお会いしましょう!!」



1999年10月23日



クルツ君の闘病生活



第1巻日記の目次 第2巻日記の目次 第2巻情報の交差点

第3巻トップページ 第3巻日記の目次

小説の世界で公開停止中の作品 フルメタル・パニック